花火ノート

オタク女の独りアーカイブ

楽しいだけの読書体験と、お尻が気になるあなたに 「風と共にゆとりぬ」

風と共にゆとりぬ

風と共にゆとりぬ

 

 初めて、朝井リョウの著書を手に取った。「桐島、部活やめるってよ」で華々しくデビュー、最年少で直木賞を受賞し、時の人となったこの作家へ、ある種の嫌悪感というか、己のコンプレックスを刺激されるような辛さを感じ、読まずに過ごしていた。が、今回、発売してすぐに本屋へ駆け込み、すぐさま「風と共にゆとりぬ」を読破した。とても面白かった。この本を手に取ったのには目的があった。書き下ろしの手記「肛門記」を読むためだ。

 

そもそものきっかけは年始まで遡る。無事に年末年始を乗り越え、いつものようにネットの海を彷徨っていたところ、衝撃的な情報がもたらされた。元AKBメンバー・高橋みなみさんが、肛門科からラジオを放送していたというのだ。一度は「神」として崇められた、うら若き女性が肛門科のお世話になったのか!? 驚きのまま、ラジオ番組を検索し、タイムフリー(活用しまくり)で放送を聴いてみた。ラジオ番組の相方である朝井リョウさんが痔瘻を患い、入院・手術をしたため、録音のストックが足りなくなり病室からの放送となったとのこと。終始笑いの絶えない放送ではあったものの、痔瘻こと痔ろうの治療は大変のようだ。体験者から発せられる言葉の端々が身に沁みていく。いや、私自体は痔ろうの気は全然ないのだが、昔、TBS放送の「リンカーン」での痔ろう話が脳にこびりついてしまい、恐ろしい病気としてインプットされてしまったことによる。ガンより怖いと思っていた時期もあった*1

この放送をきっかけに、ニッポン放送「ヨブンのこと」を聴くようになった。リアルタイムで聴けないときはタイムフリーを活用。30分番組なので、合間に聴けて助かっている。退院後も痔ろうトークに時間を費やしており、治療の大変さを物語っていた。手術後はしばらく運動面での制限が多いみたいだ。

「風と共にゆとりぬ」は肛門記を含む300ページ超のエッセイ集だ。ボリュームもたっぷりで、笑いながらページをめくった。読み進めていくと、ラジオで見せている、こじらせて疑り深いめんどくさいキャラは営業用で「この人は本当はリア充なのでは?」との感情が脳裏をかすめていく。ラジオを聴いていても大学時代のエピソードや、バレーボールの話など、失敗談として語られているはずなのに、何だかきらっと輝く瞬間がある。すごく充実した生活を送られてきたのでは……けれども、考えを改めた。リア充にみえて、相当な努力もしているのではと窺える。降ってきた幸運を享受しているだけではないし、生まれ持った才覚で渡り歩いている感もそんなにない。友人や仕事仲間もたくさんいるんだろうな、でも友人といればそれだけで十分です的な典型的リア充感も少ない。失敗談も自虐ネタもがんがん面白エッセイを繰り出すガッツもある。何よりこの人めんどくさい……!!! 私の脳内では、華々しいデビューと直木賞受賞に彩られた新時代の作家代表・朝井リョウさんの姿が完全に書き替えられた。そして、文体がラジオでのしゃべりそのもので驚いた。これが一番のオドロキ!

楽しみにしていた(語弊があるが)、肛門記は痔ろうの発症から、入院・手術までの壮絶な戦いの全てを余すことなく記している。絶対に痔ろうにならない様にしようと思った(若い男性に多いそうです)。

朝井さんを色眼鏡で見ていたことを反省し、今後も著作を手に取っていくことに決めた。まずはこのエッセイの前作「時をかけるゆとり」を買おう。

*1:子供のころはコレラが一番怖かった。秘密の花園を読んだことが原因である(恥ずかしいけれど、今も怖い……)。NHKのアニメ版は好きでした