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花火ノート

オタク女の独りアーカイブ

「吉野朔実は本が大好き」と、本の雑誌398号

読書
吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)

吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)

 
本の雑誌398号

本の雑誌398号

 

私は「ぶ~け」の洗礼を受けずに大人になった。

 

雑誌のコーナーに行けば目につくところに並べてあったから、手にする機会はいくらでもあった。でも、読まなかったのには理由があって、それはぶ~けが月刊誌と認識できなかったから。今となってはアホな理由でしかないのだけれど、子どものころはA5サイズの漫画誌は増刊号と擦り込まれていた。りぼんやなかよしの全盛期は年に何度かA5サイズのぶ厚い増刊号が出ていたからだ。りぼんには毎月ぶ~けの広告が出ていたというのに、手に取れば簡単に月刊誌と分かったはずなのに、ただ得体の知れない毎月出ている雑誌としか認識しなかった。今となっては失礼な話だよ、ほんと。

 

吉野朔実の作品を手に取るきっかけになったのは、三浦しをんのエッセイで「僕だけが知っている」を紹介していたからだ(妄想炸裂に収録)。へー面白そう。そんな軽い気持ちで読み始めて、小学生時代の瑞々しくも限られた時間を感じられずにはいられない物語に驚いて、一気に読んだ。「少年は荒野をめざす」も読んで、吉野朔実ってどこで執筆してたのかなと調べてみたら、ぶ~けで活躍していたことが分かり、さらに驚いてしまった。エッセイも描いていると分かり、近所の本屋で「お父さんは時代小説が大好き」と「お母さんは「赤毛のアン」が大好き」の文庫版を買った。何度も読み返して、ちょっと痛んでしまった。シリーズの文庫化を待っていたが、待てど暮らせど発売することはなかった。たまに本の雑誌を買ったり立ち読みしたりした時に「吉野朔実劇場」が載っていると嬉しかった。もっとエッセイが読みたいなと「こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド」も手に取ってみた。フルカラーで収録されたイラストが素敵で映画への情熱がたっぷりのエッセイ集。自分が過去に見た映画が紹介されているとまた見返そうかなと思ったりして楽しかった。

 

4月の訃報はコミックナタリーで知りました。

本の雑誌最新号での特集、今までの吉野朔実劇場8冊分をを一つにまとめた「吉野朔実は本が大好き」が出るとの告知を見て買いました。同時発売の8冊目の「天使は本棚に住んでいる」まで収録、さらにボーナストラックとして、単行本未収録分、3万円でお買い物、今月書いた人のコメント集、掲載図書索引が付いています。初出一覧まであって、細部まで行き届いた作りに感動。このぶ厚さがすごい!

手に取った時のずっしりとした重さ。寝転がっては読めない……! 25年の連載の長さを身をもって体感しました。吉野先生の本の感想や読書の楽しみ方やめくるめく交遊録。どこを読んでも楽しい!終盤に近づくにつれ、線画が若干震えてきているのが気になります……。このエッセイを読み始めたとき、丁度オースターの「偶然の音楽」を読んでいたので、勝手に運命を感じていたのを思い出しました。懐かしいな。

 

本の雑誌は50ページに渡る特集。はじめに掲載されている清原なつの先生の漫画でうるっときます。清原先生もぶ~け出身だったのか。アシスタントさんたちの対談から友人知人のみなさんからの寄稿。カラーページでは著作のカバーイラスト紹介もあるし、全漫画作品紹介が担当した執筆者の思い入れを感じながらなのが良いですね。一つの作品に半ページ使ってしっかりとした紹介。これから吉野作品読んでみたいという方へのガイドとしても最適だと思います。私も初期作品を読んでみたい! 1920年代のニューヨークを舞台にしている作品が気になるな。ぶ~けコミックスのカバーって緑のチェックでかわいかったんだね。全然知らなかったな……。ぶ~け版は可愛いけれど、手に入りにくそう。文庫版の情報はないので調べてみよう。編集後記では吉野先生の愛犬「こおり」について語られています。とてもいい文章なので気になる方は良かったら。

 

吉野朔実は本が大好き」は発売前に重版、本の雑誌も398号にして初めての重版。炎の営業日誌によると、雑誌の重版はリスクは高いが、欲しいと思ってくれた人の手に渡るように……とのことで、感服します。ありがとう! 私もすぐに買えなくて重版のお知らせを見て待ってましたからね! 重さに負けずに何度も読んでます。本が大好きな方も、普段はそんなによまない方も、誰でも楽しく読める素敵な本です。吉野先生、素敵な作品をありがとうございました。