花火ノート

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七星国に悠久の加護を ~「後宮デイズ」本編終了に寄せて~

後宮デイズ?七星国物語? 10 (プリンセス・コミックス)

後宮デイズ?七星国物語? 10 (プリンセス・コミックス)

 

後宮デイズ、完結しましたね。終わってびっくり。これは「本編」とのことで、これから番外編の連載がスタートするそうです。

 

今後も形を変えて連載があるからでしょうか。終盤の駆け足感が少し気になりました。説明が多くなり後宮内で暗躍した敵側の顛末がすべてセリフで語られてしまったこと。流星と黄道の出生の秘密をかなり時間をかけたのに、顛末があっさりしていたこと。翡翠の両親、流星にとっては育ての親の墓参りに行くあたりまで、「兄妹」として生きていた年月を払しょくできず二人の恋愛部分の盛り上がりに欠けたこと。近親的な雰囲気がとても色濃く残ってしまい、苦手な人はダメだったんじゃないかな…。間延びしてでも、もう少し血の繋がりがなかったことを強調しても良かったかもな、と思いました。流星が皇帝として生きていくことを選び、2人が婚姻関係を結んで終わる。物語としては大団円で、とても良いけれど、なんだか物足りない。でもこれから番外編として七星国と係わった人たちや2人のその後も語られていくと。私はピコーンと閃いた!これって森薫「エマ」と同じ感じになるのかな!エマもウィリアムと結ばれ社交界へデビューするところで終わる。それは新たな門出としてドラマティックに幕を閉じるわけですが、その後3巻に渡り物語を彩った人物たちがたっぷりと語られていったかと思うと、最後にまたエマとウィリアムの結婚がイギリスの新たな時代への突入と共に紡がれる。作者が余すことなく描き切った物語として、読み手側もしっかり受け取って読み切った。後宮デイズでも、ラストの翡翠の入宮を黄道の裁可のもとにお膳立てした棕櫚、最後まで恋のライバルだった柘榴からの祝福。そしてずっと翡翠のそばにいてくれた日雀へ、流星からの言葉。物語は最高潮のラストを迎える。  

でも後宮デイズは終わらない。描かなくてはならない人たちがいる。残された6人の妃たちだ。流星はきっと翡翠以外の女性のもとには渡らないのだろうから、彼女たちの行く末がとても気になってしまう。ここにきて翡翠に子どもができないなんて、ほぼ訪れない未来だろうし…。流刑にされた桔梗や国へ戻った茴香のその後とか、あまり話に係わる機会がなかった牡丹は描いてもらえないと本当に報われない気がする…見た目が凄くかわいいしね!そして、翡翠にとってもよき友であった木蓮や芙蓉、花梨は幸せが訪れるのだろうか。

 

「運命の恋」がこの物語のテーマだったそうです。私がこの物語に惹かれたのは、登場人物が普通の人々だったこと。天性の力(王家に伝わる秘技とか、魔法とかすごく美人とか)や「人を引き付ける何か」を初期設定にもっている、ずば抜けて周りから一目置かれる状態のキャラはいなかった。主人公の翡翠も普通の女の子だ。男装の麗人として、後宮で働くことになり時には芸事を武器に戦うこともあった。芸人としての能力は彼女の努力の賜物で天性の才能ではない。普段は少し地味目で目立たなくて、芸人姿の時とのギャップに逆に驚かれているくらい。妃たちも皇帝や周りの期待に応えたいと日々努力しているし、民を助けたいと身を粉にする。悪行に身を落としてしまう人々も権力を誇示し流星と対立する人々も、また普通の人間だった。そんな人たちがたくさん出てくる。彼らのために世界があるのではなくて、七星国の中に彼らは生きている。運命は美しく残酷で、常に彼らを翻弄していく。この話、割と偶然「見てしまった」や「居合わせてしまった」が多くて(翡翠の立場上、受け身なことも多いせいか)、一つ間違えればご都合主義になってしまいそうな危うさがあったのですが、後半の棕櫚が直面した自分だけ知らされていなかったある「事実」と、それに対する行動を見てこの話の偶然が許せるような気がしました。本人たちの気持ちなんか知りもせず、喜びも悲しみも否応なしに唐突にやってくる。終盤での流星の七星国へ戻る選択も黄道の最期も一つの「運命」だったのかなと思う。

 

何だかんだ書きつつも、とても好きな物語でした。近年の長期連載だらけのまんが業界にあって、全10巻で七星国をめぐる翡翠と流星の物語が一つの到達点を迎えるというのは、とても素晴らしいことだったのではないでしょうか。皇帝に気にいられて芸人として後宮に務め、お妃たちとのめくるめく日々を過ごし、三角関係ありの疑似兄妹ありの、皇帝を慕う心がやがて恋だと変化していき、果てには本当の兄妹かも!?とハラハラさせられた。百合要素も秘かにあったり、物語の発端である後宮内での女官の謎の死も無事に解決の運びとなった。本当にいろいろな要素がふんだんに詰め込まれていて、敵だと思っていた人物はやっぱりラスボスで、最後の戦いは古き良きRPGをほうふつさせながら読みつつも結ばれて大団円で終わるシンデレラストーリーはこれぞ少女漫画だなと思いました。終盤になるにつれて割と忘れていた設定がしっかり使われたり、このエピソードだけの登場かな?と思ってたキャラが救援に登場するなど、読み始めたころは設定がちょっと雑だなと思っていたのが懐かしい…。ごめんなさい!!

 

番外編で七星国のその後がいろんなキャラ達によって語られていくことを楽しみにしていきたいと思います。 これから流星と翡翠はたくさんの壁に立ち向かっていくと思いますが、周りの人たちと共に乗り越えて行ってほしいです。

 

ここから思いのままに感想を書いてみる。

棕櫚、死ななくて良かったなあ!! この漫画、予告が下手だったなあと思うんだよね。ピンチになっているキャラが予告で元気そうに登場しているし、割といい意味で詰めが甘かったなと思う。棕櫚なんか3巻のラストで死の危機だったのに、4巻でコミカルな表紙になっていたし!流星と黄道の交流シーンももう少しじっくりと見たかった…皇帝だからのんびりしていられないのは分かるのですが、この辺番外編で期待したい…期待値だけ高くなっている気がしますが!!鴉の普段の生活とか生い立ちも見てみたいなあ。この漫画、結構登場人物も多かったし、描き切れていない部分も多いけど、それはそれでいいのかもしれませんね。勝手に想像したり考察してみる余地があったほうが物語は楽しい。この漫画、1巻だけ表紙の雰囲気が違うような気がする。絵の描き方を変えたのかな?表紙は5・6・9巻が特に好きでした。久々に好きな中華風ファンタジーに出会えたと思います。設定も多くて、でも語られていない、語り切れていない部分も多くて、前にも描いたのですが、古き良きRPGを思い出す感じでした!今後は流星と翡翠の甘い新婚生活なども読めたらいいなと思います。あと成長した日雀も見てみたいです。もうしばらく七星国の物語を楽しみたいと思います。