花火ノート

オタク女の独りアーカイブ

ボーダーライン

最近、乙女ゲームを作っている有名メーカー2社が発売タイトルの著作権について言及した。その件に関して、いろんな意見を見たけれど、ユーザー側の倫理観や意識の低さに愕然とした。ひどくなると「メーカーだってパクったり金儲けのために悪いことだってしてる!」と主張している人までいた。メーカー側がどんな状態にあっても二次創作は公式のお目こぼしで成り立つ、グレーゾーンの立場にあるという前提が崩れているみたいだ。

 

先週「下天の華公式イラストコンテスト」の結果発表があった。100を超える作品の応募があり、結果を楽しみにしていた。…んだけど、とてもがっかりした。

 

プロの方が大賞だったのだ。規約には「だれでも参加できます」とあったんだけど、商業活動をしている人がPNも変えずに堂々と参加してくるのはどうなんだろうか。ゲーム系の公式アンソロジーや四コマにたくさん参加されている方なので、オタクの人は名前くらいは見たことがあると思う。そして、別の乙女ゲーのキャラデザもされている。プロとしてキャリアのある人が、堂々とメーカー主催のイラコンに商業名義で応募した。どんな形で収まるか気になっていたので、結果が出てからツイッター検索をしてみた。下天の華の二次創作関連はツイッターで固まっている。仕方がないから公式で動きがあった時や、即売会に出かける前は検索してみる。ツイッターをやらずにPixivやサイトをやっている方もいるけど、良くも悪くもツイッタージャンルである。当然不満も出ていた。が、私が一番あきれたのは応募したプロの人ご本人が「不満が出てる。名前を変えるとか応募しない方が良かったのかな」と呟いていたことだ。自ら応募しておいて何をウジウジしてるんだ。不満や疑問など、何かしらの否定的な意見が出ると予測できなかったのだろうか。そしてここからがツイッターの真骨頂だと思うのだが、取り巻きの人やら、いろんな人が「好きで参加したんだから良いと思います」「素晴らしいイラストで大賞は当然」「落ち込まないでください」とたくさんコメントを飛ばし始めた。そして、疑問に思ったり否定的なことを呟いた人に対しては「下天を知らない人・部外者」「悪口を言っている人は僻んでいるだけ」という意見まで出始めた。見ていて本当に悲しかった。誰でも応募できるという意味は「プロでもいいよ」という含み以上に「下天の華が好きな人は絵を描いて参加してね」という気楽なことだったと思う。だから、公式主催だし勇気を出して参加した人だっていたと思う。ツイッターをしている人の中には、この件に関して肯定も否定も、結果に満足している人も、納得できない人もいただろう。でも、どちらの意見であっても、あえて呟かなかった人、静観に留めた人もいただろうね。呟く人の声は大きく、結果への疑問符に対して「下天を愛していない」「選ばれなかった人は下手だったから」と切り捨てる形だった。影で泣いた人、落ち込んだ人もいただろう。自分が好きな人が否定されただけで、違う意見を出した人を叩く。想像力が欠落している。ツイッターで140文字で投稿されたものが、下天の華への全ての意見とでも言いたいのか。プロの人も応募したからには、何を言われても堂々としていて欲しかったんだけどな…。

 

プロの方は商業もそれ以外も、PNは同じままだ。二次創作であっても、だ。せめて商業活動外では名前を変えるとか配慮があっても良かったと思う、ご本人もちょろっと書いていたけど。でも、しなかった。一発で何者か分かる状態で二次創作の場にやってくるのだから、ツイッターでもファンの人は我先にとなるだろう。それに対して、プロ側も同じ目線で行動してしまう。騒いでしまう。ファンはプロとお友達になったと錯覚する。プロ側も誰にも否定されない環境で、好きな作品の二次創作ができる。その延長が今回の作品応募だったんじゃないか。純粋に下天が好きだから応募したんだろう。でもプロとして活動している人がアマチュア向けのイラコンに堂々と出てくることに驚いた。プロである以上、どこかで線引きをして自重する必要があるはず。作品が好きなら何をしてもいいわけでもないし、あえて参加しないという選択肢も考えるべきだったと思う。

 

公式側も名前を知らなかったのだろうか?でも、オタク社員が集うチームとのことで、知っていた確率は大きい。そして大賞に選んだ。せめて大賞でなかったら印象も違ったと思うんだけどな。プロが応募してくることを想定していたのか否か。それともプロだけど上手かったから選ばれたのか。そのあたりは分からない。公式側にも少しがっかり。琥狗先生はどうだったんですかね。公式側も気楽なファン向けのイベントと捉えて選んだのかもしれない。単に上手くて華やかな作品を、と。でもやはり、参加は出来ても公式側で線を引く必要があったと思う。せめて大賞に選ばない配慮は欲しかった。

 

プロの方は最初に書いたメーカーの公式アンソロジーに係わりつつも、その作品の二次創作をやっている。プロが二次に対してこんな状態なら、若いライト層の子はもっと分からないだろう。メーカー側が苦言を呈したのはグッズの関してだけど(非営利なら作ってもいいみたいだが)、同人誌もさほど変わらないと思う。アンソロジーと言えども公式にかかわっているのに、平気で二次もやってるって*1…。公式と二次創作、アマチュアとプロの垣根は曖昧になっていく。ぐっちゃぐちゃのカオス状態は最終的に手に余ったメーカーにより手厳しく線引きされる形になり、自分の非を認めないユーザー側が騒ぐ。でも、それは一時的。また元のカオス状態に戻る。

 

乙女ゲームの二次創作はツイッタージャンルと言っても過言ではない。イベントに買い物に行ってもツイッターオフ会だ。本を買いたいのにサークルさんと喋ることに夢中で退いてくれない人も多い。大体サークルさんが気がついてくれて、売ってくれるけど。ツイッターがあることで、ただの買い手もジャンルの人間として堂々と振舞う。ツイッターでつぶやくだけで、同人誌などの作品を作る描き手やプロと同じ土俵に立ってしまう。ほんの少し前まで、アマチュア同士でも読み手と描き手の間には明らかな境界があった。逆にツイッターをしていない、ただ買いものに来た私に「あんた誰?」という顔をしたサークルさんもおりました。ごめんな、ツイッターしてなくて。

 

イラコンの件もつらつら書いたところで、下天を愛していないやつの文句になるのだろうか?ツイッターをしてないとファンの一人としてカウントしてもらえないのかな。ツイッターでの意見がその作品を好きな人たちの総意だと思われたら困る。どんなに好きな作品でも少なからず不満や否定やイライラはあるし、それをひっくるめて愛しているんだから。

 

ここまでプロの方に対してかなり書いてしまいましたが、イラストはとても素敵で素晴らしかったです。とても目を引く華やかなもので、やはり絵仕事をされているのだなと感じました。イラストそのものは、大賞に値する素敵な作品だった。だからこそ、名義を変えるなり、配慮がほしかったし、他の場所で、違った形で見たかったです。

 

イラコン自体はたくさんの応募があって、いろんなイラストを見ることが出来て楽しかった。応募された皆様、お疲れ様でした。また同じような公式企画があっても、これから何かあってもメーカー主催の企画に「一ファン」としてプロが隠さず出てくるのかと思ったら、気後れして参加する人が減ったりして……こうして作品が終息していくのかも。がっかり。二次はもういいや。公式をひたすら応援する。以上。

 

【追記】2015年12月14日 ・コーエーテクモゲームス×TINAMI『下天の華』イラストコンテスト コンテスト開催から1年以上たったのでリンクを貼っておきます。

 
 

*1:株主総会で「同人誌は宣伝」と容認されたそうです。メーカー的にはプロが同人誌を出してくれるのは大歓迎ってことでしょうか…?